一度だけ | 水面からめくりとった水びたしの月

一度だけ

私はいつかあなたに
魂の形について
語りかけたいと思う

あなたが一度だけ
何もかも脱ぎすてて
肉体までも脱ぎすてて
見せてくれた 魂の
美しかったこと

明け方の陽の中で
その色は深い緑色
そして 森の奥の斜面の
樹々の隙間から射す
やわらかい卵色の光に
彩られていた

私はそして 自分の魂を見た
ざわめく夕闇の素粒子の中で
その色は鈍く 暗く
よどんで灰色だった

形は半球形
あなたと私の魂は同じ形
そして 同じ大きさ
切り口の直径も同じ
ただ 色だけが違った

いつか私の魂が
あなたと同じ深い緑色になったら
そして 無数の光に彩られたら
私はあなたに
魂の形について
語りかけたいと思う

遅すぎなければ そして
早すぎなければ

あなたの肩ごしに
あなたの魂ごしに
私が見たものについて
語りかけたいと思う

夜へ向かって解き放たれる
銀色の羊たちのことを
あなたの思い出のメロディラインから生まれる
ヒスイ色の魚たちのことを

私はいつかあなたに
語りかけたいと思う