The sun will not appear Ⅳ | 水面からめくりとった水びたしの月

The sun will not appear Ⅳ

太陽が昇らないので

人々は 思い始める

もの全ての 本当に色は

闇の黒なんじゃないかって


そして 気づく

この世界にあった ありとあらゆる

 [][][][][][]


コスモスの 淡いピンクも 濃い赤も

雨に濡れた木の葉の 濃緑も

イルカの背のつややかな 濃紺も

幼い子供の 日に透ける髪の 金茶も

小麦畑の 黄金も

沖に集まる光の 銀色も


太陽が 

最も愛した星が自分に顔を向けたとき

おくってくれたせいいっぱいの

挨拶であり

得がたい 宝であり

奇蹟の 贈り物であったことに


人々は 空を見る

太陽はそこにない


太陽が昇らないので

形や色のあったものは

見えなくなった


スタートもゴールも見えないので

全てのraceは中止になった

白も黒も黄色も赤もないので

全てのraceも意味がなくなった


形のあったものが見えない代わりに

形のなかったものが 

はっきり見えるようになった


黒いくせに 黄色いくせに

赤いくせに

ちびのくせに デブのくせに

あばたのくせに

他のみんなと違うくせに


そんなふうにわめく 金切り声の醜さや

その言葉の見苦しさが

くっきりと

見えるようになった


太陽が昇らないので

世界中の日時計が 自らすすんで

日時計の墓場へ ゆっくりと移動を始めた

彼らは 自分が止まった時間の

針の先を向き合わせて

井戸端会議を始める

そのうち

いつか太陽はまた昇ると見解が一致し

その日時を当てる ととかるちょが始まる

だけど みんなが忘れていた

日時を正確に刻むものは

もう何もないのだということを


そして まだ

太陽は昇らない