The sun will not appear Ⅸ | 水面からめくりとった水びたしの月

The sun will not appear Ⅸ

太陽が昇らないので

人は月を 少し悲しい目で

見るようになった

 

赤く巨大な春の月は

人に 一瞬の喜びと

その後の失望と

それまで以上の

悲しみを与えた


太陽に似ていることは

罪ではない

太陽でないことは

罪ではない


それでも月は

赤さの罰として

より 赤く


巨大さの罰として

もっと 巨大になっていった


月は 自分の姿を

夜の色に塗りこめた


月は 太陽と同じように

捜され 待ち焦がれられる

存在になった


太陽が昇れば

暗闇の色をした球体が

西の空にあるのがわかるのだが


あいにく まだ

太陽は昇らない