檜男の悲劇 | 水面からめくりとった水びたしの月

檜男の悲劇

「僕は人間国宝になりたい」
ピノキオは言いました
するとジュゼッペじいさんは言いました
「だっておまえ 人間じゃないだろう」
ピノキオは仙女様と契約を取り交わし
良い子で契約事項全てを遵守し
とうとう人間になりました

ピノキオは言いました
「僕は人間国宝になりたい」
するとジュゼッペじいさんは言いました
「10年早い」
そこでピノキオは、十年待ちました

そしてまた、言いました
「僕は人間国宝になりたい」
するとジュゼッペじいさんは言いました
「ごめん わしがもうなってる

しゃべれる人形を作ったと 匠の技を認められて」
ピノキオの心は 嫉妬と羨望で心がみるみる曇り

気がつくと 元の木の人形に戻っていました

ちょうどいいから 鼻が折れるまで
ジュゼッペじいさんをつつきました

そこでピノキオは仙女様に頼むことにしました
ただ普通に言っただけではきっと
頼み事をきいてくれそうもないので
ピノキオは言いました
「仙女様 おきれいですね」
とたんにピノキオの鼻が伸びました
仙女様はピノキオにびんたをくらわして
どこかへ消えていきました