La musica de el viento | 水面からめくりとった水びたしの月

La musica de el viento

風が草木を奏でている
さわさわという葉ずれの音とは
明らかに違う旋律

あなたは言うだろう
葉ずれの音
それしか聞こえないと

風の楽曲は人の心に届くまで
時間がかかる
遠い星から来る光のように


あなたは知っているだろうか
ある時突然 心に浮かぶ曲
どこかで聴いたことがある
美しい音の連なり
だけど どこでだか思い出せない
それが あの日
風の奏でていた旋律

もういないあの人と
木漏れ日を浴びながら
愛を語っていたとき
森が奏でていた 風の楽曲
小さい頃 お母さんと
手をつないで歩いていたとき
木立が奏でていた 美しい曲

それが ある日
何年もの歳月を経て
心に届くのだ


もう風は吹かない
私の上を走り回っていた
あの小さい生き物たちは
どこへ巣立っていったのだろう
また 帰ってくるだろうか

およそ 宇宙全体で
もっとも美しい音楽 
それを

ゆっくりと
宇宙空間を転がる
青い星が聴く

膨張した太陽にのまれ
その一部になる直前に

自らが愛でた生命たちのことを
思い出しながら