水面からめくりとった水びたしの月 -11ページ目

魔法使い

魔法使いって


おばあさんになるまで


どこのいるの?



なんでもできるなら


七夕のたんざくには


何を書くの?




★ティンカーです。ちょっと空からおりてよってみました。



やさしさをつぎ足そうとしたんだ

生きていた頃の

お父さんへの

優しさが足りなかったから

生きていた頃の

お父さんへの

優しさを

つぎ足そうとしたんだ

時間のどこかが

記憶のどこかが

ぱかっと開いて

優しさを

つぎ足せると思ったのに

開けるところがみつからないの

誰か一緒に探して

素直さだって

優しさだって

今ならこんなにあるのに


私の居場所

言葉が通じても

心が通じるとはかぎらなくて

この世界は居心地が悪い

誰かの苦しみがわかっていても

手をさしのべるには遠すぎて

居心地が悪い

楽しむために人を殺す人たちと

呼吸する空気がつながっていて

居心地が悪い

誰かを平気で傷つける人たちと

接している地面がつながってて

居心地が悪い

丸くて くるくる回ってて

この世界はほんとに

居心地が悪い


たしかこんな季節だったね

木々は幹にそれぞれ名札をつけていた

風にひるがえる葉は雨音に似た

声で何かを話しかけていた

木の言葉がわかればいいのにと

二人同時に思ったけど

口に出したのは私だった


あなたの歩幅は大きく

そしてゆっくりだった

精神世界 コミュニティ

シュタイナーの学校

人の心を癒すための教育


ふたりで行こう

北海道へ

スコットランドへ

生きる意味を学ぶために

それを誰かに

伝えるために

空を飛んで行こう

海を渡って行こう


あなたの唇から

あとからあとから

夢があふれ出て

あたり一面

収集がつかないくらい

”いつかある日”であふれかえった


風にひるがえり

陽光をリレーする木々の葉たちも

低く飛んで海景を寸断するツバメたちも

みんなあなたが充満させた

夢を呼吸していた


あなたの歩幅は大きく

そしてゆっくりだった

あなたの生きる速度とは

正反対に


木の言葉がわかればいいのにと

二人同時に思ったけど

口に出したのは私だった


私はあなたの夢を

ふかぶかと吸い込んで

酔っていた


たしかこんな季節だったね



今宵の空は

今宵の空は

ターコイス・ブルー

月の光の届く場所では

山の形が際立っている

水に落としたインクのように

天を覆って 広がる雲が

意味ありげな

模様を形づくっている

 

ものをどかした床のように

そこだけ若い 空の色

そこには猫のかたちに青く

夜空にぽっかり

できた空洞

クリスタル

膨らんだクロ-ムイェローの雲が

西の空に堆積している


氷のように

醒めて 冴えた青空

その果てから声のない声で

またたき 呼びかける

もうない恒星たち

凍える支度を終えた森で

密かに

寂 がはじける

すっふ すっふ

何百の葉 何千の葉の

織りなす網に

捕われ 

風がもがく


どこかでさらさら溶け合う

光の粒子と 闇の粒子

しずかに宙を舞う

金色の木の葉


鏡に映った

鏡に映った

鏡に映った

鏡の中の

あの人を殺したのは

あの人があの人の夢の中に

私を 置き去りにしたからだ


鏡に映った

鏡に映った

鏡に映った

鏡に映った

鏡を潜り抜け

逃げおおせるつもりだったが

西の空に堆積していた雲が

太陽を覆ったとき

光源が変わり

私は鏡の中に

閉じ込められた


もう一度会いに来て

今度は殺さないから


いとしすぎるあなたの代わりに

私はいくつもの鏡像を殺した

しずかに空中を舞う

金色の木の葉


収縮する

残光のキューポラ


あれは私のすべての夢を

通り抜けてきた

金色の木の葉

今 私の肩に

舞い降りる


私はもう二度と

夢を見ないのだ

地底人のひとりごと

誰だよ

こんな夜中に

まあここには

夜中も昼間もないけど

毎日毎日

もういいかげんにしてくれ

自分が気がすめばそれでいいのか

ったく

王様の耳がどんな形してようが

俺には関係ないんだよ

発掘

埋め戻してあげてください


ひきこもりのミイラなんです

進化

無限との境界線を失った

吸いこまれそうな青空に


針金と薔薇の花と擬音でできた

骨格標本のような

人力飛行機のような


たとえば

たとえられないもののような


物 生き物 あるいはパターンが

現れる


あれははるか昔

滅亡したはずの

テラノドン


違う次元で

原型をとどめぬほど進化して

一瞬だけ姿を現したのだが


そのとき 誰も

空を見ていなかった



童詩 Ⅱ

食べかけの月を

空に置いたの

 

毎日減ってる

 

誰か食べてる